金利も株も強い。これは“危険なサイン”なのか?

金利と株が上昇する異例の相場──その裏にある構造とは?
金利もドルも株も強い。これは“危険なサイン”なのか?

景気は悪化している──はずなのに、なぜか金利も株も強く、ドルも一時的に強くなっている。そんな“ねじれた相場”が続く今、私たちは本当に安全な場所に立っているのでしょうか?
本記事では、2025年5月14日時点のマクロ経済をもとに、この異常な市場環境の背景をわかりやすく解説し、次の一手を考えます。

目次

なぜ景気は冷えているのに、株は上がるのか?


🔥 はじめに:いま、私たちは“ねじれた相場”にいる

景気が悪化している──そのサインは確かに出ています。ISMは低下、企業の景況感も冷え込みつつある。

なのに、なぜ株は下がらない?ドルはなぜ強い?金利まで上がっている?

私たちはいま、「データ」と「価格」のねじれた相場を生きています。

この記事では、マクロ経済の視点からこの現象の背後を読み解き、「今どこか?」「これからどうするか?」を、明快かつ理論的に解説します。


① 景気は明らかに鈍化している──その中身とは?

アメリカの製造業を測る代表的な指標「ISM製造業指数」は、2025年に入って急落しています。

この水準は、2020年のコロナショック直後とほぼ同じレベル。これは明らかに「景気後退のサイン」です。

にもかかわらず、株価は高止まり──この違和感の正体はどこにあるのでしょうか?


② 金利もドルも上がっている?──それ、普通じゃありません

景気が悪くなると、通常は中央銀行が利下げを行い、それに伴って金利も通貨(この場合はドル)も下がります。

でも今は、景気悪化が意識されているのに米国の長期金利もドルも上がっている。

ドルは一時的な上昇という感じではありますが、上げてはいます。

これは矛盾しているように見えますが、次のような背景が影響しています:

  • 米国債の発行増 → 債券価格が下がり、金利が上昇
  • 地政学リスク → 安全資産としてドルに資金が集中(“リスクオフ需要”)
  • FRBの利下げタイミングが遅れるとの観測

リスクオフ需要とは、不確実な状況で投資家がリスク資産から離れ、ドルや米国債などの“安全資産”に逃避する動きのことです。

つまり、“景気が悪いのにドルと金利が上がる”という異例の動きは、「構造的なゆがみ」と「逃避的な需要」が重なった結果なのです。


③ インフレは収まりつつある──これはチャンスなのか?

2022年に9%台まで上昇したCPI(消費者物価指数)は、2025年春の現在では2〜3%台に落ち着いています。

これは「悪いインフレの時代が終わりつつある」ことを意味します。市場にとっては好材料です。

その理由は以下の3つ:

  • 金利のピークアウト期待が高まり、金融緩和の余地が生まれる
  • 企業や家計のコスト圧力が和らぎ、消費・投資が回復しやすくなる
  • インフレが“話題”でなくなることで、センチメント(心理)が好転する

特に最後の点が重要です。実際、「インフレ関連の検索数」が激減しているというデータもあります。

話題にならなくなった=不安のピークを過ぎたと市場が判断し、「悪材料出尽くし」として買いが入りやすくなるのです。


④ 市場を支える“3本の流動性供給ライン”が動いている

株や仮想通貨が下がらない理由のひとつ。それが「流動性の復活」です。

現在、次の3つの主体が同時にドル資金を市場に供給しています:

  • 米財務省: 財政支出を通じて市場に資金を放出
  • 民間銀行: 貸出(クレジット創出)がじわじわ回復
  • FRB: リバースレポの残高減少 → 市場に資金が戻っている

この3者が同時に動いているのは、強気相場の初期フェーズに特徴的な現象

これが、今の「悪いデータでも市場は崩れない」状況を支える土台になっています。


⑤ マクロモデルが示す「米国は買い」のシグナル

複数のプロ向けマクロモデルでは、現在のアメリカは「成長」「流動性」「インフレ安定性」がすべて揃った良好なフェーズにあるとされています。

この状態は、リスク資産にとって非常にポジティブです。

実際、AI関連株やナスダック銘柄には資金が流入し続けており、2026年にかけて「AIバブル」が進行するという見方も出てきています。

もちろん、バブルには必ず終わりが来るものですが──「途中で乗らなかった人だけが損をする」局面がすでに始まっているのかもしれません。


⑥ 欧州は埋もれていく?──弱気データが目立つ

米中が政策・市場で主導権を握る中、欧州は冴えない状況が続いています。

データ上でも「成長」「流動性」「インフレ」いずれのスコアも弱く、特に製造業関連の指標では明確な落ち込みが見られます。

例外は「デジタルインフラ」など一部分野だけ。

相対的に欧州株や通貨は注目度が低く、当面は“主役不在”の状態が続くかもしれません。


⑦ 中国は再びエンジンを吹かし始めた?

一方で、中国は回復の兆しを見せ始めています。

とくに米国向け輸出の回復や、信用環境の改善などが目立ち、資源国通貨や中国関連ETFへの資金流入がじわじわと確認され始めています。

これが本格的なトレンドになるなら、世界の「第二エンジン」として中国が再評価されるフェーズに入る可能性もあります。


🧭 まとめ:いま私たちは“何フェーズ”にいるのか?

  • 景気指標は悪化 → 通常なら株は下がるはず
  • でも、金利・ドル・株・ビットコインすら強い
  • その裏側には「構造的な流動性供給」と「不安の沈静化」がある

いま私たちは、「弱いデータを織り込んだうえでの強気相場の初動」に近いフェーズにいるのかもしれません。

もちろん、過信は禁物です。AIバブルが膨らみすぎれば、破裂もある。
地政学リスクやクレジット不安が再燃すれば、話は一変します。

チャートを見る限り、米ドルはいつ急落してもおかしくないし、そうなりそうな雰囲気があります。

だからこそ、「今どこ?」を問い続ける視点こそが、未来の投資判断における最大の武器となるのです。

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